幻の含糖栄養剤「どりこの」の製造法を探る

<目次>
1 初めに
2 なぜどりこのの製法は不明なのか
  2-1 どりこのの特許明細書について
  2-2 特許明細書の書き方は不自然?
3 どりこのの製法の検討
  3-1 どりこのの材料の検討
    3-1-1 ショ糖
    3-1-2 水
    3-1-3 アミノ酸
  3-2 どりこのの詳細を伝える他の科学的資料


1 初めに
「どりこの」は戦前の日本で一大ブームを巻き起こした清涼飲料の名前です。
医学博士の高橋孝太郎が栄養吸収の合理化と高速化を目的に開発しました。
(高速化…というのは現代の科学的な感覚では「?」という感じなのですが(笑)、
今回、この話題はちょっと置いておきますね)

私はこの、どりこのにずっと興味を持っていました。
始まりは10年ほど前だったでしょうか。
地元の駅で配られていた地域情報のフリーペーパーに掲載されていた、
大田区・田園調布にある「どりこの坂」を紹介する記事で、
坂の名称の由来になった甘い飲み物「どりこの」について読んだことがきっかけでした。
――戦前に人気を博した、ドロッとした黄金色の原液を水で割る飲み物、主成分は砂糖らしい。
製法が失われ、今では作ることができない――

人気を博したにも関わらず今では作れないという謎にロマンを感じたことに加え、
私にはもうひとつどりこのに惹かれた理由がありました。
私は小さい頃に砂糖水(ジュースではなく…本当に文字通り、砂糖を水に溶かしたもの)を飲むのが好きでした。
家で使っていた砂糖は上白糖ほど精製されていない茶色っぽいものだったので、その砂糖水はうっすらと黄金色をしていました。
この思い出と重なり合って、謎に包まれたどりこのは格別な煌きをまとった砂糖水の王様に思えたのです。

さて、どりこのを調べるうえで、
宮島英紀さんの著書『伝説の「どりこの」 一本の飲み物が日本人を熱狂させた』(以下『伝説の「どりこの」』)
は外せない必読書ですね。
私も興味深く読ませていただきました。
歴史に埋もれた資料や、どりこのの関係者たちの貴重な証言が多く書かれています。


 どりこの坂
図1 「どりこの坂」の風景

 どりこの坂のいわれ
図2 どりこの坂の標識に記された坂の名称の由来
 “昭和の初めごろ、坂付近に、「どりこの」という名の清涼飲料水
 を開発した医学博士が屋敷をかまえたので、誰いうとなく「どりこの坂」
 と呼ぶようになったといわれている。それまでは、池山の坂といっていたという。”




2 なぜどりこのの製法は不明なのか

2-1 どりこのの特許明細書について
発売されていたどりこのの正確な製法がわからないとはいえ、
高橋博士が「含糖栄養剤の製造法」としてどりこのの製造法の特許を
取っていたことは、どりこのファンには周知のとおりです。

高橋博士が丹精込めて開発したどりこのの詳しい製法を書き残さず、研究資料を処分してしまったのは、
特許を取得できたからということがひとつ、大きな理由としてあったのではないでしょうか。
「どりこのを作るのに必要な内容は特許明細書にすべて書いたよ、本気で作ってみたければ読み解いてごらん」
私には博士がそう言っているように思えます。

そもそも特許とは、自分が発明したものについての秘密を社会の利益のために開示する代わりに、
その発明に対する独占権を得るというものです。
逆にいうと秘密を少なくともある程度は明かさなければ、特許を取得することはできないのです。
そのような特許に係る情報があるのに、どうして製法がわからないとなってしまうのか。
「含糖栄養剤の製造法」について、製造法の詳細を記した「特許明細書」という文書を閲覧すれば、
何らかの情報は得られるはずです。
戦前のことなので特許明細書が残っていない、となれば話は別ですが…

…なんて書いたりしてみますが、特許明細書は残っています。
『伝説の「どりこの」』には、どりこのの特許明細書の番号(74843)が書かれていますので、
この番号を使って、この後ご紹介するサイトにてご確認ください。

もし番号がわからない状態でしたら、このような調べ方になります…(一応挑戦してみました!)
最近の特許であれば、発明者名などから簡単に調べることができるようですが、
戦前の特許の場合は一筋縄ではいきません。

1つ目は、国会図書館にある『特許分類別総目録. 明治18年8月-昭和31年12月』から調べる方法です。
この目録に載っている分類別(生活必需品、処理操作;運輸、科学;冶金 など)の情報をひとつずつ確かめて、
どりこのの特許にあたるものを慎重に探していきます。
出願人や発明者別の索引はないので、地道に調べていくほかありません。
…これはきついですね!
国会図書館までわざわざ足を運ぶことになるので(利用者登録などもあるらしく色々と面倒)、
1日で調べ終われないとつらいことになります。

調べ方の2つ目は、独立行政法人 工業所有権情報・研修館が運営する
特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」という特許情報提供サービスを使う方法です。
明治以降に発行された、日本の特許・実用新案・意匠・商標の公報などを調べることができます。
今や、わざわざどこかに出向かなくても特許情報を調べることができる時代なのです。
さすが21世紀ですね!(←この表現、久しぶりに使いました(笑))

早速、2つ目の方法で調べてみました。
ところがさすがはお役所系検索サイトです…検索方法が難解でした(汗)
国会図書館のサイト「リサーチ・ナビ」の「戦前の日本特許の調べ方」を参考に、必死に頭を悩ませることになりました。
特許番号がわからない状態としてスタートしたので、
分類から調べていくことになりましたが、
まず、どこに分類されているのかがわかりません。
J-PlatPatの「パテントマップガイダンス(PMGS)」の分類表を見てアタリを付けながら、
特許・実用新案分類検索」のページの検索窓に
よくわからない計算式のような数字と記号の羅列(「検索式」というそうです)を入力して調べていきます。
入力方法が正しくなかったのか、ここで何度もはねられます…
苦戦しましたが、検索式を「C13K3/00」と入力した検索結果一覧に出てくる「特明74843」というものが、
1927年に特許が認められた「含糖栄養剤の製造法」の特許明細書、すなわちどりこのの製造法でした。

みなさまは、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)の「特許・実用新案番号照会」で
「種別」に「特許発明明細書(C)」を選択し、「番号」に「74843」と入力して照会してください(笑)


これから注目のその内容について取り上げていきます。
ですが、まずはお断りを少々書き記しておくことにします。
戦前という時代柄、特許明細書の漢字はまだ旧字体を使っています。
文字化けを防ぐために全て新字体に改めた上で、必要な個所を引用していきます。
また、この後も古い文献を複数ご紹介していきますが、すべて同様の扱いをしてまいります。
さらに元の文献は漢字ではない部分が皆、カタカナのものもあります。
これも読みやすくするために適宜ひらがなに変えておきます。

「含糖栄養剤の製造法」の特許明細書はまず「発明の性質及目的の要領」の項目から始まります。

“本発明は蔗糖を容易に吸収せらるべき養素状態となすため「アミノ」酸により之を転化糖となす栄養剤の製造方法に係り其目的とする所は蔗糖を次記の方法により葡萄糖と果糖とに転化し加うるに転化に応用せし「アミノ」酸は体蛋白構成原基として利用せらるる含糖栄養剤を簡単に而も廉価に得んとするにあり”

ここを読むと、どりこのはアミノ酸(酸)や熱を加えることによって
ショ糖(スクロース)をブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)に加水分解(転化)したものだったことがわかります。
転化とは、ショ糖を含む二糖類(=ブドウ糖や果糖のような単糖類が2つ縮合したもの)の加水分解のうち、
ショ糖の場合に限った呼び方です。
なお、ショ糖とブドウ糖・果糖の混合物の甘さを比較すると、ブドウ糖・果糖の混合物の方がヒトは甘さを感じます。
果糖単独ではショ糖の1.7倍もの甘さになります。
人々の心を虜にした魅惑の甘さの秘密は、おそらくこの辺りにもあるのでしょう。

そして続く「発明の詳細なる説明」の項目の
「されば左に『アミノ』酸の転化効力の一実験例を述べ次て本剤製造の一実施例を記載すべし」から続く
以下の部分に、(お待ちかねの!)どりこのの製造法を考えるうえでとりわけ重要な内容が記されています。
(引用中の表は、特許明細書中の記載を可能な限り忠実に写したものです。
特許明細書には縦書きで記載されていますが、このページでは掲載の都合で横書きに直してあります。)

“実験例
「メルク」社製純蔗糖を以て50%の蔗糖溶液を作り此溶液20gに「メルク」社製「グルタミン」酸を溶存蔗糖に対し0.5−1.0%の割合となる如く添加し之を凡そ摂氏110度に加熱せる「グリセリン」浴中に納むる時は暫時にして煮沸するを以て一定時間之を持続せしめたる後直に内容を冷却し「アリン」氏法に従い還元糖を定量せり其の成績左の如し

番号 蔗糖に対する「グルタミン」酸% 温度 時間 生成せる転化糖(g) 同上に相当する蔗糖(g) 転化率
1 1.0 煮沸 1.5 9.683 9.192 91.92
2 0.5 煮沸 2.0 9.858 9.365 93.65
備考 実験1は殆ど着色せざれども実験2は稍々着色す

以上の如く「グルタミン」酸は蔗糖に対し0.5%を用い2時間煮沸を行う時は凡そ94%を転化し得然れども稍々着色するを免かれざるも1%に於ては甚だ有効に作用するを知る
尚実験例を挙げて本発明の実行方法及効果を説明すべし
先ず蔗糖300gに水150gを加え更に「アミノ」酸を前記実験例の割合を以て之に添加し充分混和の上内容約400mlの硝子製壜内に納め栓を以て密閉す次て転化促進と滅菌操作とを併せて行う目的を以て此物を摂氏110度にて約1−2時間加熱す〔液体含糖栄養剤〕
又携帯に便ならしむる為には上記のものを密閉容器内に於て操作せし後更に之を固形体となす所置を行う〔固形含糖栄養剤〕
又遊離「アミノ」酸の一例として例えば「グルタミン」酸石灰〔(G5H8O4N)2Ca〕3.32gを0.1規定塩酸溶液200mlに溶解し「グルタミン」酸を遊離せしめたる溶液に蔗糖300gを混加溶解せし後之を約1時間煮沸し転化を行うか或いは又「グルタミン」酸塩酸塩3.67gを0.1規定苛性ソーダ溶液200mlに溶解し「グルタミン」酸を遊離せしめたる容器に蔗糖300gを混加溶解せし後之を約1時間煮沸し転化を行う斯して此場合に於ては塩化「カルシウム」或いは食塩を共存せしめ保健並に転化上多少の効果をあらしむるにあり”




2-2 特許明細書の書き方は不自然?
特許明細書を読むと、少し不自然に思えるような書き方が散在しています。
ひとつずつ詳しく取り上げていきたいと思います。

まず、「『アミノ』酸の転化効力の一実験例」の表に続く「備考」に
「実験1は殆ど着色せざれども実験2は稍々着色す」と、
着色することがあたかも悪いことであるかのように書かれています。

しかし、実際のどりこのは黄金色だったと伝えられています。
そしてこの色について、高橋博士がこだわりを持っていたらしいことが
『伝説の「どりこの」』に記されています。
高橋博士は着色料を使うことを「有害無益で科学的に意味がない」として嫌い、
どりこのの色は自然発色で出していたそうです。
昭和11年7月7日の「時事新報」に掲載された当時のどりこのの広告中(『伝説の「どりこの」P.89』)にも、
「『どりこの』の黄金色は全く人工着色でなく、<中略>製造工程に於ける自然反応着色で、
従つて此色は『どりこの』特有のものであります。」とあります。
また戦後に再び製造したどりこのの色を見て「これだっ、この色だ」と感激したというのです。

ブドウ糖や果糖とアミノ酸を混ぜたものを加熱すると、
メラノイジンという色素を生成するアミノカルボニル反応(メイラード反応)という着色反応が起きます。
おそらくどりこのの着色はアミノカルボニル反応によるものだったのでしょう。
(加えて、糖類とアミノ酸を混ぜ合わせて加熱すると、香気成分も生じます。
このことについては後ほど改めて書いていきたいと思います)

なお、他に糖類が加熱によって着色する反応としてはカラメル化が有名ですが、
カラメル化は120〜180℃程度の過熱によって起こる反応です。
なので特許明細書の内容を見る限り、どりこのを作る反応では少し加熱が足りないものと考えられます。
もっともブドウ糖と果糖は単独でも、ショ糖よりもわずかな熱(55℃程度)で着色しやすい性質があります。
アミノカルボニル反応が原因ではない褐変も、どりこのを作る過程で起きていた可能性があります。


次に、実験に用いた試薬としての純ショ糖とグルタミン酸がメルク社製であると強調されているのも不自然です。
万全を期した記載するというのなら、グリセリンの製造メーカーについても記載する方が自然ですが、
これについては記載がありません。
(ちなみにこのメルク社とはおそらく、
ドイツに本社を置く化学品・医薬品のメーカーとして現在も存続する企業だと思われます。
あんな風に書かれると妙に気になりますよね?)
そもそもメルク社の試薬であることをわざわざ記載する必要はあったのでしょうか?
時代的なものなのか、あるいは他の目的が何かあったのかもしれません。


さらに「『アミノ』酸の転化効力の一実験例」で、
「含糖栄養剤」の材料を混ぜ合わせ、
(これをガラス瓶に入れてと考えていいのでしょうか?よく読むと記載がありません)、
「凡そ摂氏110度に加熱せる『グリセリン』浴中に納むる」
つまり110℃に加熱したグリセリンで湯煎するという部分も疑問が浮かびます。
『伝説の「どりこの」』によると実際のどりこのの製造では、材料の砂糖水とアミノ酸が入った鍋を直火にかけ、
出来上がったものを濾過した後にガラス瓶に注いでいたようなのです。
温度調整は高橋博士が自ら行っていたといいます。

しかも後に続く、発明品である含糖栄養剤の製法を示した部分には、
混ぜ合わせた材料をガラス瓶に密閉するとはありますが、
グリセリンについての記載は無くなっていて、
単に「此物を摂氏110度にて約1−2時間加熱す」というシンプルな表現になっています。
グリセリンの製造メーカーについて特許明細書に記載がなかったのは、
断定はできませんが、実際のどりこのの製造ではグリセリンを使用していなかったためと推測できそうです。

110℃という温度そのものは、実験の濃度(50%)でのショ糖水溶液の沸点が、
沸点上昇により100℃よりも高くなるためです
(ちなみにグリセリンの沸点はもっと高い温度になります)。
ショ糖水溶液50%の濃度では101.8〜101.9℃ほどが沸点となりますが、
沸点は溶質(今回は水に溶けている糖)の分子の数が多いほど高くなるので、
ショ糖の加水分解によって水に溶けているブドウ糖や果糖が増えていくことを考慮すると
どりこのに変化していく糖類の水溶液の沸点はさらに高くなっていくことが予想されます。
砂糖水を直火で、沸点に達するほどの温度を保ちつつ焦げ付かないように熱し続けることは、かなり骨の折れる作業になります。
グリセリンで湯煎する方法は滅菌操作を兼ねると明細書にはありますが、焦げ付き防止の意味もあるのでしょうか。


そして、これまで挙げてきた不自然な部分をさらに超える不審な内容も記されています。
ショ糖水溶液に加えるアミノ酸について「『アミノ』酸の転化効力の一実験例」では、
アミノ酸の一種であるグルタミン酸を添加したとはっきり書いたにも関わらず、
その後に続く、発明品である含糖栄養剤の製法を示した「尚実験例を挙げて本発明の実行方法及効果を説明すべし」からは
再び「アミノ酸」という大きな括りでの書き方に変わっています。
あくまでも「『アミノ』酸の転化効力の一実験例」は単なる「例」であると言わんばかりの書きようです。
その割には、しばらく後に「『アミノ』酸の一例として例えば」という断りを入れて再びグルタミン酸の名前が登場するのです。
しかも「『グルタミン』酸石灰」「塩酸溶液」「『グルタミン』酸塩酸塩」
「苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)溶液」「塩化『カルシウム』」「食塩(塩化ナトリウム)」と、
これまでの内容よりも明らかに具体的な名称が続々と挙がります。
使う量も非常に具体的で「3.32g」「3.67g」と、小数点以下2桁まで書かれています。
一体これはどうしたことなのでしょうか。
明細書に挙げられている具体的な物質の1つ1つについては、
後で詳しく検討することにして、いったん話を進めます。


以上のようにどりこのの特許明細書の中には、
不自然に感じられるような書き方が多数散見されることがお分かりいただけたと思います。

先に書いたように、特許は自分が発明したものについての秘密を社会の利益のために開示する代わりに、
その発明に対する独占権を得るというものです。
とはいえ、その発明が苦労を重ねた成果であればあるほど、
できるだけ秘密は秘密のままにしておきたくなるのが人情ではないでしょうか。
高橋博士はどりこのの開発に数年の歳月を要したといいます。

開示する秘密はできるだけ最小限に――
こうした考えを持って、肝心なところをわざとぼやかすような書き方をした…と考えると、
特許明細書が不自然な書き方になっていることに納得がいきます。
しかし、詳しい秘密もある程度開示しなければ特許は取得できないので、
付け加えのように具体的な物質名を記載したのでしょう。



3 どりこのの製法の検討
ここまで書いてきたことを前提として、どりこのの製法をこれから検討していきます。
すでに前提が推測によるところが多いため、完全に製法を特定することは不可能なのが残念ですが、
それでも進めるところまでは進んでいきたいと思います。
資料から読み取れるどりこのに可能な限り近づけたらと思います。

さて、特許明細書の記述や『伝説の「どりこの」』によるとどりこのは、
ショ糖の水溶液に酸(=アミノ酸=グルタミン酸)と熱を加えてショ糖を加水分解させ、
ショ糖から変化したブドウ糖や果糖をアミノ酸と熱によってさらにアミノカルボニル反応を起こさせて、
生成した色素のメラノイジンで黄金色に着色させた液体ということになります
(こんな風に書くと、とても飲み物には読めませんね(汗))。


3-1 どりこのの材料の検討
はじめに、どりこのの材料から検討したいと思います。

特許明細書の実験例によると、メルク社製の純ショ糖とグルタミン酸を使うとあります。
では早速それを入手して…ということではありません。
というのは、メルク社で製造している純ショ糖やグルタミン酸はあくまでも「試薬」扱いをすべきものですので、
基本的に飲食用ではありません!
実験に影響が出ないように徹底的に精製されているはずなので、もちろん体に害は無いはずですが…
一応理系出身なので、試薬で作った溶液を飲もう!なんて言いたくないのですよ(汗)

あと、試薬は結構高額です。
高橋博士の言う「含糖栄養剤を簡単に而も廉価に得んとするにあり」が実現できません(笑)
今ちょっと調べましたら、(メルク社製ではありませんが)試薬のショ糖は500gで1300円しました。


3-1-1 ショ糖
ショ糖を例に挙げましたので、まずはショ糖から考えていきたいと思います。
そもそもショ糖とは、私たちが日常で使う代表的な砂糖である上白糖(白砂糖)の主な成分です。
ですが、どりこのの材料が上白糖であったと決めることはできません。
上白糖はしっとりとした感触を持たせるために、
ショ糖の結晶をビスコ(ブドウ糖と果糖がほぼ等量に含まれる混合溶液)で覆っています。
どりこの作りではショ糖をブドウ糖と果糖に分解するから…といっても、
操作前からブドウ糖と果糖が混ざった状態では、始まりの条件からして、いきなり遠く離れてしまうようにも思えます。

ここは特許明細書にある純ショ糖に最も近いものを材料に選びましょう。
ちなみに先ほど書いた1300円の試薬のショ糖は、
性質や取り扱いをまとめた安全データシートによると全体の99.5%以上がショ糖であるそうです。
食べられるショ糖で最も不純物(ブドウ糖や果糖などの違う種類の糖や灰分)が
少ない砂糖は、99.97%がショ糖の「グラニュー糖」や「白双糖(しろざらとう)」です。
この2つの砂糖は共に双目糖(ざらめとう)という種類の砂糖です。

グラニュー糖は双目糖の代表的な砂糖で、白色の結晶には光沢があり、粒の大きさは0.2〜0.7mm程度です。
喫茶店などで見かける細長い紙袋に詰められた砂糖です。
白双糖は上双糖(じょうざらとう)とも呼ばれ、さらさらとした1.0〜3.0mmの大きさの光沢のある無色の結晶です。
綿あめの材料になる、あの砂糖です。
白双糖は粒が大きいので比較的水に溶けにくいものの、ショ糖の含有量が非常に高く共存成分は少ないため、
品質的にはグラニュー糖と同じかそれ以上になります。

現在はグラニュー糖の方が身近な印象があると思います。
年代ごとの生産量の統計(表1)を見ても、グラニュー糖は近年上白糖に次いで2位の生産量となっています。

表1 精製糖の製品別生産量の推移 単位:千t
年次 1958−60 1961−70 1971−80 1981−90 1991−00 2001-07
上白糖 758 1,143 1,416 1,089 858 720
グラニュー糖 86 280 757 574 594 567
液糖 21 197 223 284 342
三温糖 101 84 59 77 98 102
双目糖 159 139 121 116 107 91
その他 49 56 51 53 34 26
合計 1,153 1,717 2,600 2,132 1,974 1,849
(『砂糖の事典』P.34 表1−4より 網掛けは本稿著者による)

しかしグラニュー糖を除く双目糖(白双糖は含まれる)も1958〜60年には、
グラニュー糖を超えて上白糖に次ぐ生産量があったことがわかります。
生産量の推移をみるとどりこのが製造されていた時代には、
データはありませんが、グラニュー糖の生産量を超える多量の生産が行われていたことも想像できます。
少なくとも1958〜60年頃は現在よりも身近な砂糖だったといえます。
生産量が多ければ手に入りやすく、安価でもあったことでしょう。
どりこのの原料のショ糖も白双糖だった可能性が十分考えられます。



3-1-2 水
次にショ糖を溶かす水については、特許明細書に特に何の記載も見られません。
飲食するための普通の水ということで、今回は水道水とします。
(なんだか妙にアッサリですみません…)



3-1-3 アミノ酸

続いてショ糖の水溶液をどりこのに変えるアミノ酸について、詳しく考えてきたいと思います。

どりこのの材料となるアミノ酸について、
「尚実験例を挙げて本発明の実行方法及効果を説明すべし」の部分に付け加えのように挙げられた物質名こそが、
どりこのの材料の鍵とみられることは2-2で書いた通りです。
つまりどりこのの材料のアミノ酸が、グルタミン酸であった可能性は極めて高いと考えられます。
さらには「グルタミン酸石灰」「塩酸」「グルタミン酸塩酸塩」「水酸化ナトリウム」
「塩化カルシウム」「塩化ナトリウム」
これらの物質が表す意味を探れば、高橋博士が添加したグルタミン酸について詳細が明らかになるのでしょう。

まずは「グルタミン酸」そのものについて簡単に触れておきます。
アミノ酸の一種であるグルタミン酸は、体内で神経伝達物質として機能します。
昆布、緑茶、トマト、魚介類などに多く含まれていることが知られています。
水溶液は弱酸性で、酸というだけあって酸っぱい味がする物質です。

このグルタミン酸について、高橋博士が含糖栄養剤の特許を取得する19年前の1908年にある特許が認められています。
その特許とは「『グルタミン』酸塩を主要成分とせる調味料製造法」です。
グルタミン酸塩(えん)で調味?
これがグルタミン酸の物質として特に有名な特徴を表しています。
グルタミン酸とは、うま味を感じさせるうま味物質のひとつなのです。
特許明細書にはグルタミン酸を調味料として扱いやすくするために、
グルタミン酸の酸っぱさを塩基で中和させて消し、結果としてナトリウム塩を生じさせる方法が記されています。
グルタミン酸のナトリウム塩、すなわちグルタミン酸ナトリウムです。
現在「うま味調味料」と呼ばれるものの主成分になります。
このグルタミン酸ナトリウムを生成する過程で、
先ほどの「グルタミン酸石灰」や「グルタミン酸塩酸塩」が生じてくるのです。

「『グルタミン』酸塩を主要成分とせる調味料製造法」の特許明細書に書かれたグルタミン酸の生成法では、
グルタミン酸は小麦粉などから分離したタンパク質を、
塩酸や硫酸と熱を加えて加水分解することで生じさせます。
このうち硫酸を使う方法は、後の研究で効率が非常に悪いことがわかりました。
このため「『グルタミン』酸塩を主要成分とせる調味料製造法」の特許明細書より、
硫酸を用いる方法は省略し、塩酸を用いる方法を紹介します。

“塩酸を用いて蛋白質を加水分解したる場合には腐食質状の黒色物を生ずるを以て之を濾し去りたる濾液を蒸留して塩酸の一部分を回収し濃稠の液を残留せしむ此液を曹達(※1)にて中和したるもの及び之を蒸発乾涸したるものは調味料として使用するを得べし
一層濃厚の調味料を製するには前記の蒸留残液を冷却放置して塩化水素「グルタミン」酸を結晶として十分に析出せしめ之を母液より別ちさらに濃塩酸より再結晶せしめて純粋の塩化水素「グルタミン」酸と為し之を曹達にて中和し「グルタミン」酸「ナトリウム」と食塩との混合物を製す
食塩分を混有せざる純濃の調味料を造るには前記の方法によりて得たる塩化水素「グルタミン」酸を水に溶し之にてき量の曹達を加えて塩化水素を中和すれば「グルタミン」酸は結晶となりて析出するを以て之を用いて「グルタミン」酸「ナトリウム」を製すること上文に記したるが如し”


(※1)「曹達(そうだ)」は文脈から考えると水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)を指すと思われます。
(硫酸を用いる方法に炭酸曹達(炭酸ナトリウム)、重炭酸曹達(炭酸水素ナトリウム)の名前が挙がっています)

とはいえ、この内容だけでは少しわかりにくい部分があります。
なので、うま味調味料と言えば…ということで、
「味の素グループの100年史」(味の素のサイトに掲載されています)より、
「序章 生産開始への道[〜1908年]第2節 池田菊苗との出会いと「味の素」生産開始」(以下「序章第2節」)と
「第2章 試練の克服[1920〜1930年]第2節 設備の拡大と品質向上」のグルタミン酸ナトリウムの製造の様子を見ていきたいと思います。
開発当初の「味の素」を廉価に大量生産するために、様々な製法を試した様子が記されています。
また新しい人名が登場しましたね。
池田菊苗は「『グルタミン』酸塩を主要成分とせる調味料製造法」の特許を申請した人物その人です。
開発者の池田氏が指示した味の素の製造法はこのようなものでした(序章第2節より)。

“原料の小麦粉をタンパク質と澱粉に分離し、タンパク質に濃塩酸を加えて加熱分解し、それを放冷してグルタミン酸の塩酸塩を析出させ、圧搾して濾過液を取り除く[粗製工程]。次に、塩酸塩を中和してグルタミン酸とする[中製工程]。そして、重曹を加えてグルタミン酸ナトリウム溶液とし、この溶液を脱色・ 濃縮してグルタミン酸ナトリウムの結晶を得る[精製工程]。”

どりこのの特許明細書にあった「グルタミン酸塩酸塩」が出てきました。

さて、うま味成分となるのはL-体という形のグルタミン酸ナトリウムで、
光学異性体のD-体のグルタミン酸ナトリウムにヒトはうま味を感じません(※2)
そのため、L-体のグルタミン酸ナトリウムを効率よく製造する方法が研究された結果、
中製行程で塩酸塩溶液に中和剤として水酸化ナトリウムをpH3.2になるまで加え、
グルタミン酸を沈殿させて分離する方法が編み出されました。
この「グルタミン酸法」という製法で味の素が製造されるようになったのは1925年です。
グルタミン酸法が開発される前には石灰塩法と呼ばれる製法が行われていました。
この石灰塩法でグルタミン酸ナトリウムを製造する過程で「グルタミン酸石灰」が生じます。

(※2)光学異性体は簡単に説明すると、同じ分子式で表せる物質ながら構造に違いがあり、
生物に対しての作用の仕方が違うものです。

このようにどりこのの特許明細書には、
グルタミン酸ナトリウムを製造する際に工程の途中で生成するグルタミン酸を含む物質を、
2種類(グルタミン酸塩酸塩、グルタミン酸石灰)も例として挙げていたことになるのです。
しかもどりこのの特許が認められた年(1927年)と照らし合わせると、
当時の最新のグルタミン酸ナトリウムの製法と、その直前まで行われていた製法で生じる物質となります。
ショ糖を分解するために必要なのはグルタミン酸なので、
グルタミン酸塩酸塩に水酸化ナトリウムを加えても、
グルタミン酸石灰に塩酸を加えても、グルタミン酸を水に溶かし出せれば同じことです。
もちろん、グルタミン酸ナトリウムを水に溶かすと、グルタミン酸とナトリウムイオンとに分かれます。

なお、どりこのに使われていたアミノ酸は、『伝説の「どりこの」』によると、
天秤で量ることができ、粉薬のように紙に包めるものだったそうです。
グルタミン酸ナトリウムであれば、
どりこのの材料であったアミノ酸が粉末状のものだったという話にも一致します。
さらに具体的には、どりこのを開発した時代を考慮すると、
「味の素」そのものに由来するものだったと考えて不自然はないと思われます。
グルタミン酸ナトリウムをどりこのの材料として廉価に大量調達する目的で「味の素」を選ぶことは合理的と言えます
3-1に書いたように、純度の高い試薬のようなグルタミン酸は高額です)。


以上より、どりこのの材料は、白双糖、水(水道水)、うま味調味料「味の素」だったと推定できます。



3-2 どりこのの詳細を伝える他の科学的資料

やはり第二次世界大戦を挟んでいるためか、
現在入手できるどりこのに関するまとまった情報の書かれた文書類はあまり多いとはいえません。

特に、どりこのについて科学的な内容が読み取れるものは、
特許明細書と『伝説の「どりこの」』に取り上げられている成分分析結果の報告書(後述)のほか、
どりこのの投与が子ウサギの骨や歯に悪影響を及ぼしたなどとして、
どりこのに否定的な立場だった庄司吉宗氏による論文しか今のところ見当たりませんでした
(論文データベースサイト CiNii ArticlesGoogle Scholarなどで検索)。
「再ビ「どりこの」ノ栄養価ニ就テ : 其1 酸塩基平衡ヨリ観察シタ「どりこの」ノ価値」、
「再ビ「どりこの」ノ栄養価ニ就テ : 其2 体重及管状骨ニ及ボス影響ヨリ観察シタ「どりこの」ノ価値」、
「再ビ「どりこの」ノ栄養価ニ就テ : 其3 管状骨ニ及ボス影響, 特ニソノ骨長径ノ増減ヨリ観察シタ「どりこの」ノ価値」の3本です。
このうち最初に発表された論文(再ビ「どりこの」ノ栄養価ニ就テ :其1)には、
どりこのに関する内容の論文が少なくともさらにもう1本あったらしい内容が見えますが、
この論文も見つけることができませんでした。
古いためにデータベースに載せきれていないだけなのか、悪い場合には散逸してしまったのかもしれません。

ともあれ、庄司氏の「再ビ「どりこの」ノ栄養価ニ就テ : 其1 酸塩基平衡ヨリ観察シタ「どりこの」ノ価値」には
どりこのの成分についての成分分析結果や製法に関する考察が書かれています。
否定的な立場から書かれたものなので、開発者の高橋博士による文書類と比較すると、
より客観的に詳しくどりこのを知ることができるかもしれません。

論文によると、どりこのは
「ショ糖に或る化学的操作〔Cl及びSO4を検出し得なかった点に観て『どりこの』はショ糖をHCl又はH2SO4以外のもので処理したもの〕を施して」
加水分解し(どりこのの特許明細書の記述と一致します)、
「之に或る調味料乃至香料(オレンジ?)を加えた」ものと推論されています。

どりこのの重要な材料であるアミノ酸については全く触れていないことから、
庄司氏はどりこのの特許明細書を読んでいなかった可能性が考えられます。
しかし、調味料ないしオレンジのような香りをつける香料が入っているのではという部分が興味深いです。
客観的に食欲を誘うような味や香りがしたということになります。
とはいえ着色料について「有害無益で科学的に意味がない」と考えていたらしい高橋博士が
余分な調味料や香料をどりこのに使っていたとは考えにくいです。
調味料は味の素(=うま味調味料)を使っていたことが推測できましたが、
これは加水分解反応に必要なグルタミン酸の供給源ですから、余分な調味料にはあたりません。
うま味成分はうま味成分のまま、どりこのの中に残存していたのでしょう。

庄司氏らがどりこのを分析した結果は以下のとおりです。

表2 庄司氏らによるどりこのの分析結果
比重(セ氏16度) 1.320
滴定酸度 42.5
水素イオン濃度 3.85
水分% 33.38
固形分% 66.62
灰分% 0.108
ブドウ糖% 28.53
果糖% 28.02
ショ糖% 9.55
燃焼熱量1g中 2740
総窒素量% 0.03
一壜中Kirokalolie 1640
 即ち百分中ブドウ糖28.53,果糖28.02を算し,之にショ糖の9.55%を合算すれば,百分中実に66.1の糖分を含有することになり
(「再ビ「どりこの」ノ栄養価ニ就テ : 其1 酸塩基平衡ヨリ観察シタ「どりこの」ノ価値」より)

一方、高橋博士が昭和6年に東京工業試験所(現・独立行政法人産業技術総合研究所)に
依頼して実施したどりこのの成分分析結果は以下の通りです(『伝説の「どりこの」』P.235より)
(『伝説の「どりこの」』に図として記載されていた表から写したものです。
図には縦書きで記載されていますが、このページでは掲載の都合で横書きに直してあります)

表3 高橋博士によるどりこのの分析結果

工報第一四八五三號
報告書
東京府荏原郡碑衾町
依頼者 高橋孝太郎
一品名 どりこの
右當所ニ提出シタルモノニ付定量分析ノ成績左ノ如シ
    百分中
葡萄糖 三二.三四
果糖  三一.四六
蔗糖  一.四五
灰分  〇.一一
水素イオン濃度(五倍稀釈稀釋水溶液) PH三.五
昭和六年四月十日
東京工業試験所

2つのどりこのの成分分析結果は、少々数値に違いがみられます。
特に高橋博士の依頼による分析結果では、ブドウ糖、果糖の割合が高く、代わりにショ糖の割合が低くなっています。
高橋博士が分析を依頼したどりこのは、加水分解反応を理想的に進められたどりこのだったのかもしれません。
例えば同じ時代の味の素の製造では、グルタミン酸ナトリウムの製造過程において、
リトマス試験紙や舌加減に頼らざるを得ない時期があったことが「味の素グループの100年史」に記されています。
このことからもわかるように、ほぼ同じ品質の物を安定して製造することは今よりも難しかったのです。

そして庄司氏が指摘したどりこのの香りについてですが、
これもショ糖がグルタミン酸によって加水分解され、
ブドウ糖と果糖がアミノカルボニル反応で着色する過程で生成していくものと考えられます。
糖類やアミノ酸の種類、反応条件の違いにより、以下の表4に示すように異なった成分や異なった臭気が生成します。

表4 アミノ酸と糖を加熱したときに生成する香気
温度 グリシン グルタミン リジン メチオニン フェニルアラニン
100℃(pH6.5) ブドウ糖 カラメル(+) 古い木(++) いためたサツマイモ(+) 煮過ぎたサツマイモ 酸敗したカラメル(−)
果糖 カラメル(−) 弱い フライしたバター(−) きざんだキャベツ(−) 刺激臭(−−)
マルトース 弱い 弱い 燃えた湿った木(−) 煮過ぎたキャベツ(−) 甘いカラメル(+)
ショ糖 弱いアンモニア(−) カラメル(++) 腐ったバレイショ(−) 燃えた木(−) 甘いカラメル(−)
180℃(pH6.5) ブドウ糖 焼いたキャンデー(+) 鶏小屋(−) 燃したポテトフライ(+) キャベツ(+) カラメル(+)
果糖 牛肉汁(++) 鶏糞(−) ポテトフライ(+) 豆スープ(+) よごれた犬(−−)
マルトース 牛肉汁(+) いためたハム(+) 腐ったバレイショ(−) 西洋ワサビ(−) 甘いカラメル(++)
ショ糖 牛肉汁(+) 焼肉(+) 水煮した肉(++) 煮過ぎたキャベツ(−−) チョコレート(++)
(++)よい、(+)わるくない、(−)いやな、(−−)ひじょうにいやな香気
(『砂糖百科』P.287 表8−6より 網掛けは本稿著者による)

どりこのの加熱温度は特許明細書の記述から推測すると110℃程度だったことから、
100℃の場合に注目していきます。
どりこのに含まれるブドウ糖、果糖、ショ糖とグルタミン酸を加熱した場合には、
それぞれ「古い木(++)」、「弱い」、「カラメル(++)」の香気が生成します。
好ましい印象を抱かせる香気のみが生成しています。


加水分解によって同じ濃度でもショ糖よりも甘さを感じやすい果糖が多く含まれた水溶液に
アミノカルボニル反応によって食欲を誘う色と香り、
さらには味の素によってうま味が加わったものがどりこのだったということになります。
おいしくないわけがありません。






参考文献

〔1〕宮島英紀(2011)『伝説の「どりこの」 一本の飲み物が日本人を熱狂させた』角川書店.
〔2〕高橋孝太郎,中村松雄「含糖栄養剤ノ製造法」特許第74843号,特明74843,1927-8-26.
〔3〕高田明和,橋本仁,伊藤汎(2003)『砂糖百科』社団法人糖業協会,精糖工業会.
〔4〕橋本仁,高田明和(2006)『シリーズ〈食品の科学〉砂糖の科学』朝倉書店.
〔5〕日高秀昌,岸原士郎,斎藤祥治(2009)『砂糖の事典』東京堂出版.
〔6〕庄司吉宗(1937)「再ビ「どりこの」ノ栄養価ニ就テ : 其1 酸塩基平衡ヨリ観察シタ「どりこの」ノ価値」,『金澤醫科大學十全會雜誌』42(1),p.192-201,金澤醫科大學十全會.
〔7〕庄司吉宗(1937)「 再ビ「どりこの」ノ栄養価ニ就テ : 其2 体重及管状骨ニ及ボス影響ヨリ観察シタ「どりこの」ノ価値」,『金澤醫科大學十全會雜誌』42(2),p.525-534,金澤醫科大學十全會.
〔8〕庄司吉宗(1937)「再ビ「どりこの」ノ栄養価ニ就テ : 其3 管状骨ニ及ボス影響, 特ニソノ骨長径ノ増減ヨリ観察シタ「どりこの」ノ価値」,『金澤醫科大學十全會雜誌』42(2),p.535-539,金澤醫科大學十全會.
〔9〕池田 菊苗「『グルタミン』酸塩を主要成分とせる調味料製造法」特許第14805号,特明74843,1908-7-25.
〔10〕「味の素グループの100年史 序章 生産開始への道[〜1908年]第2節 池田菊苗との出会いと「味の素」生産開始」,http://www.ajinomoto.com/jp/aboutus/history/pdf/his00_2.pdf(参照2016-12-2)
〔11〕「味の素グループの100年史 第1章 創業と模索[1909年〜1919年]第2節 生産体制の強化」,http://www.ajinomoto.com/jp/aboutus/history/pdf/his00_2.pdf(参照2016-12-2)
〔12〕「味の素グループの100年史 第2章 試練の克服[1920〜1930年]第2節 設備の拡大と品質向上」,http://www.ajinomoto.com/jp/aboutus/history/pdf/his02_2.pdf(参照2016-12-1)
〔13〕スクロース(サッカロース)500G,http://www.drug.co.jp/products/detail/15352
〔14〕安全データシート(SDS),http://www.drug.co.jp/attached_document/329/1987202335994.pdf


〔2〕、〔9〕の特許文献の発明の名称および〔6〕、〔7〕、〔8〕の論文タイトルは文字化けを防ぐために新字体に改めた。




2017年9月20日公開
2018年2月2日更新
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